【具体例】
 自社工場が全焼し、現在復旧工事中です。製造は完全にストップした状態です。
工場再建中に売上がない為、支出する経費の資金を利益保険にてカバーしたいと 思います。
 利益保険申込書には、てん補期間3ヶ月、付保項目として人件費を付保しており、 保険金額は4,000万円です。
 この場合、保険金は4,000万円の支払いがなされるでしょうか?
【回答
この工場の1年間の決算と3ヶ月間の損益が次のようであったとします。
                                       (単位:万円)
    項目             1年間の損益    3ヶ月の損益計画
  売上高(営業収益)        24,000         6,000
  売上原価               14,000         3,500

   (内経常費)             (4,000)           (1,000)
   (内人件費)             (2,800)          ( 700)
   (他変動費)             (7,200)          (1,800)
  販売費及び一般管理費       6,000          1,500
   (内経常費)             (4,000)         (1,000)
   (内人件費)             (2,000)         ( 500)
  営業利益                4,000          1,000

 罹災直前1年間の売上高 25,000

 支出を免れた付保経常費はなかったとします。

 罹災で3ケ月間休業し、売上高がゼロの期間の損益は下記のようになっているはずです。 実際の損害額と利益保険の支払額とを計算してみます。

    項目          3ヶ月の損益計画     3ヶ月の罹災期間
  売上高(営業収益)          6,000             0
  売上原価               3,500           1,000

   (内経常費)               (1,000)          (1,000)
   (内人件費)              ( 700)           ( 700)
  販売費及び一般管理費      1,500          1,000
   (内経常費)             (1,000)          (1,000)
   (内人件費)             ( 500)           ( 500)
  営業利益                 1,000           △2,000
   
        1年間の付保項目の合計額(人件費)4,800
利益率=     1年間の営業収益  24,000         =20%

        営業利益4,000+(経常費)8,000
損害率=   1年間の営業収益 24,000        =50%

(3ヶ月の罹災期間中)

収益の減少    利益率   支出を免れた経常費     喪失利益
  6,000  ×   20%  −    0        =    1,200 
  
  結果の喪失利益1,200は、罹災期間の人件費1,200に一致します。
 人件費だけを付保したのでこのような結果になります。

 ただし実際の損害は人件費以外にも発生しており、次のようになるはずです。
収益の減少    損害率   支出を免れた経常費    実際の損害額
  6,000  ×   50% −      0       = 
 3,000万円

 この額は3ケ月間の経常費2,000と罹災がなかったならば得た3ヶ月間の
営業利益1,000の合計額です。あるいは、罹災のための営業利益1,000が損失2,000になった減少額3,000です。

 利益保険は実際の損害額とは別に、さらに付保率を計算して最終的に支
払う保険金を確定します。付保率の計算は次のようです。 
                                          
           保険金額 4,000                   付保率
     保険価額5,000(年間営業収益25,000×利益率20%)  =80%

 付保率がなぜ80%なのかは、売上高が増収傾向にあったことも一因ですが
当初から保険金額4,000が少なかったことが大きく影響しています。

    喪失利益      付保率       実際の支払保険金
    1,200   ×    80%    =    
 960万円

 支払保険金を実際の損害額とするには、営業利益と全経常費を全部付保すること、保険金額を年間の付保項目の合計額とすることです。(そのとき営業収益の増減の見込みを考慮することが必要です。)

 以上のようなケースの他にも、その企業によって損害額は異なりますので、お気軽にご相談下さい。 

 
損 害 保 険 の 計 算